黄表紙きべうし)” の例文
黄表紙きべうしを讀んでゐた平次は、起き上がると煙草盆を引寄せて、こればかりはよく磨いた眞鍮しんちうの煙管と共に八五郎の方に押しやるのです。
若し彼等の「常談じやうだん」としたものを「真面目まじめ」と考へて見るとすれば、黄表紙きべうし洒落本しやれぼんもその中には幾多の問題を含んでゐる。僕等は彼等の作品に随喜ずゐきする人人にも賛成出来ない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
指にそまりし黄表紙きべうし
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
これは何も黄表紙きべうしだの洒落本しやれぼんだのの作者ばかりではない。僕は曲亭馬琴きよくていばきんさへも彼の勧善懲悪くわんぜんちやうあく主義を信じてゐなかつたと思つてゐる。馬琴は或は信じようと努力してはゐたかも知れない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たまには黄表紙きべうしを出したり、八五郎とヘボも鬪はせますが、何べんも何べんも讀んだ黄表紙が、夢中になるほど面白い筈はなく、八五郎と一きよくかこんでも、申分なく人間の甘い八五郎に
「歌舞伎芝居や黄表紙きべうしにあるだらう。紛失物は大概たいがいきまつて居るよ。小倉の色紙に、讓葉ゆづりは御鏡おかゞみさ。それからそれ、御家の系圖だ。皆んな一度は惡人の手に入つて、大騷ぎするにきまつて居る」