黄玉こうぎょく)” の例文
うでもなれ、左を試みに振ると、青玉せいぎょく黄玉こうぎょくも、真珠もともに、月の美しい影を輪にして沈む、……たつくちは、水の輪に舞ふところである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と、屠蘇を燗酒に改め、自らも、先づ箸を鮒の腹部につけ、黄玉こうぎょくの如く、蒸し粟の如きを抉り出しぬ。客は、杯を右手めてに持ちながら、身を屈めて皿中を見つめ、少し驚きしといふ風にて
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
紫に明け渡る夜を待ちかねて、ぬっと出る旭日あさひが、おかより岡をて、万顆ばんか黄玉こうぎょくは一時に耀かがやく紀の国から、ぬすみ来たかおりと思われる。この下を通るものは酔わねば出る事を許されぬおきてである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)