鬼子おにご)” の例文
どうか或る意味においては親に似ぬ鬼子おにごになってくれと思うて手出しの途もないのでただ自然にいのりをかけている。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
人間が現わす表情の中、見る人を不快にさせる悒鬱な表情は、実に憎みによって奪い取って来た愛の鬼子おにごが、彼の衷にあって彼を刺戟しげきするのにるのではないか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
積もった雪を足で蹴上げ、親に似ぬ子の鬼子おにごの大弥太は、寒さも物かは走って行く。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さうした風貌や、気性のたけだけしさにかけては、大友はむしろ叔父の大海人に生写しだとまで噂されてゐた。要するにこの青年王は、父太子にとつては鬼子おにごの趣きが多分にあつたのである。
鸚鵡:『白鳳』第二部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「ああいうのを鬼子おにごと言うんだろうね。加柴さんも飛んだ災難だね」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
うりつるには、瓜が実る筈だから、親に似るものかと思うとそうは行かない。遺伝学いでんがくのことは知らないが、犬や馬のように親に似たものは生れない。鬼子おにごばかりである。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)