髷先まげさき)” の例文
だが藤次には、その髷先まげさきだけを鮮やかに斬る確信はなかった。当然、顔にかかる、頭の鉢を横に割るだろう。勿論、それでさしつかえない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガラツ八の八五郎は、髷先まげさきで春風をきわけるやうにすつ飛んで來ました。
草ほこりのたかった髷先まげさきを散らして、べんけいじま単衣ひとえ、きりッと裾をはしょって脚絆きゃはんがけ。それは目明しの万吉であった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱鞘しゅざやで、白絣しろがすりの着ながしだった。青額あおびたいに、講武所風の髷先まげさきが、散らばって、少し角ばったにがみのある顔へ、酒のいろを、ぱっと発している。三十前後の男である。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒い大紋の袖が、さっと、内匠頭の髷先まげさきを払った。と思うまに速い跫音は、ついと向うへ立ち去った。檜張ひのきばりの厚い板床が、内匠頭の膝の下で、ミシリと鳴った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)