馴染なず)” の例文
何時緑をとったか分らないような一本の松が、息苦しそうに蒼黒あおぐろい葉を垣根のそばに茂らしているほかに、木らしい木はほとんどなかった。ほうき馴染なずまない地面は小石まじりに凸凹でこぼこしていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「二三度こわしちゃ結い、壊しちゃ結いしないといけないのよ。毛が馴染なずまなくって」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
電車の音のする所で月をるのは何だかおかしい気がすると、この間から海辺に馴染なずんだ千代子が評した。僕は先刻さっき籐椅子といすの上に腰をおろして団扇うちわを使っていた。さくが下から二度ばかり上って来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)