馬場先ばばさき)” の例文
「西丸の大手から、神田橋かんだばし馬場先ばばさき和田倉門わだくらもん、それから坂下二重門内の百人番所まで、要所要所は尾州の兵隊で堅めたとありますね。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此処ここを通るのは二度目である。この前来た時には馬場先ばばさきほりに何人も泳いでゐる人があつた。けふは——僕は見覚えのあるほりの向うを眺めた。堀の向うには薬研やげんなりに石垣のくづれた処がある。
半蔵御門はんぞうごもんより外桜田そとさくらだの堀あるいはまた日比谷ひびや馬場先ばばさき和田倉わだくら御門外ごもんそとへかけての堀端ほりばたには一斉に柳がうわっていて処々に水撒みずまきの車が片寄せてある。この柳は恐らく明治になってから植えたものであろう。
ちょうど教部省は、文部省と一緒に、馬場先ばばさきの地から常磐橋ときわばし内へ引き移ったばかりで、いろいろな役所の仕事に、国学の畑の人を求めている時であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)