かぐわ)” の例文
もろもろの花は地にあらわれ、鳥のさえずる時すでに至り、班鳩やまばとの声われらの地にきこゆ。無花果樹はその青きを赤らめ、葡萄ぶどうの樹は花さきてそのかぐわしき香気をはなつ。
渦巻の浮彫をしたかめ形の王宮にはほうぼうに入口があり、暖い日にはおどしのよろいをきた幾百の騎士が勇みたって湖のかなたに笑顔をもって彼らを待つ恋人のかぐわしい脣をすいにゆく。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)