かおり)” の例文
しかしこの『茶の本』は人心の機微に立脚した文字で長くそのかおりを世に残すにたる檀香だんこうとも言うべきもの。
茶の本:01 はしがき (新字新仮名) / 岡倉由三郎(著)
えならぬ物のかおりがして、花やかなすそ灯影ほかげにゆらいだと思うとその背後から高谷千代子が現われた。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
あの花のかおりは、糞ッ臭いから、いやだと言うようだが、幸いに私の嗅覚は、それほど過敏でない故か、ちっとも苦にならないどころか、臭いからして、私はこの花が好きだ
菜の花 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
青々と茂っている羊歯しだの間から矢車草の白い花が潮に浮かんだ泡沫あわのようにそこにもここにも見えているのも高原雀が幾百羽となく木の間を縫ってけているのも、鼻を刺す高い木のかおり
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)