阿母おっかさん)” の例文
死ぬる二三日前、彼女はぶらりと起きて来て、産後の弱った体で赤ん坊を見て居る母のうしろに立ち、わたしが赤ん坊を見て居るから阿母おっかさんは少しお休みと云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「実はこの間見えた時も、ちょっとその話をしたんですがね。君がいつまでも強情を張ると心配するのは阿母おっかさんだけで、可愛想だから、今のうちに早く身を堅めて安心させたら善かろうってね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(貴下のおなくなんなすった阿母おっかさんのお友だちです。)
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて阿母おっかさんが出て来た。沈着な阿母も、挨拶半に顔が劇しく痙攣けいれんして、涙と共に声を呑んだ。彼は人の子を殺した苛責かしゃくを劇しく身に受け、唯黙って辞儀ばかりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まあどうして、あんなに聞き訳がないんでございましょう。何か云い出すと、阿母おっかさんわたしはこんな身体からだで、とても家の面倒は見て行かれないから、藤尾にむこを貰って、阿母おっかさんの世話をさせて下さい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「わたしがくなったら如何でもして恩報じをするから、今夜は苦艱くげんだから、済まないが阿爺さん起きて居てお呉れ、阿母おっかさんは赤ん坊や何かでくたびれきって居るから」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼人あのひとの顔を見るたんびに阿母おっかさん疳癪かんしゃくが起ってね。……
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)