さわが)” の例文
これで何百年来この山国をさわがした𤢖の眷族けんぞくも、はたして全滅したであろうか。あるいなお其余類そのよるいが山奥にひそんでいるであろうか。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
翌日、焼芋屋の店をうかがふと彼は例の如く竈前かままえに遊んでゐる。しかし昨夜の事を迂闊うっかり饒舌しゃべつて、家内の者をさわがすのも悪いと思つたから、私は何にも言はなかつた。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
今までは凍り着いたように静寂しずかであった町も村も、にわかに何となくさわがしくなった。鴉や雀は何物にか驚いたように啼き出した。犬もしきりに吠え出した。山の方では猿が悲しそうに叫び出した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)