とろ)” の例文
亢奮こうふん! 亢奮! 亢奮! である。それは責任を感じない。また咎められる心配もない。衆口しゅうこう金をとろかすというが、群衆心理がそれであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私の留守中にあの仲働が叔父様を(併せて貴方を)とろかし丸部家を横領するは目に見えたる所なれど如何とも致し方無く候、今既に貴方も叔父様も心の鎔けたる者に御座候
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
申さば、世間の毀誉褒貶きよほうへん、これはたれにも、避けられぬこと、また歯牙しがにかけるにも足らぬことにございましょうが、最前も仰せのごとく、衆口金をとろかすのたとえもある。慎まねばなりません。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲はまた血のごと沈黙しじとろけゆき影だに留めず。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)