錦旗きんき)” の例文
大総督有栖川宮ありすがわのみや錦旗きんき節刀を拝受して大坂にで、軍国の形状もここに至って成ったとの風評はもっぱら行なわれるようになった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし思い給え、今や、小藩足利は、危機目前、ひと度、錦旗きんきのまえに、賊名を負わば、何を以て、千ざい日月のもとに、武士の名がござろう。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この男が、自分で錦旗きんきをこしらえ、井上馨のもとにもってきた。そうして、この旗を出して、こちらが官軍だということにしなさいというのである。
いやしくも錦旗きんきにたいして銃先つつさきを向けたものである、すでに大義に反す、なんぞ英雄といいえよう
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
錦旗きんきを奉じた尾州兵が大手外へ進んだ時は、徳川家の旧旗下はたもとの臣は各礼服着用で、門外まで出迎えたとある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
公称六万余騎錦旗きんきの兵をもって、なおまだ、赤松円心の白旗城しらはたじょう一つ抜けずにいたのだから、これでは彼へのいろんなそしりや蔭口がおこなわれたのもむりではない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黙れッ、黙れッ。天とはここに臨んだ錦旗きんきをいう。身のほど知れ、この鼠賊そぞくめ。ただちに、兇器を投げて、降参いたせばよし、さなくば、みじんにいたすぞよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)