鉤裂かぎざ)” の例文
いや、伸子さんのへやドア際にあった、鉤裂かぎざきの跡を見ても、夫人の右手が、あの当時痲痺していたことが判るんですよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
まだ起きて帳面でもけていたのであろうか? 妙に皺の多い瘠せた顔の奥から、金壺眼かなつぼまなこを眼鏡越しに光らせている姿……鉤裂かぎざきだらけの上衣を着けて
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
猶太ユダヤ人の冠るような縁なし帽に鉤裂かぎざきだらけの上衣を着けて、薄暗い土間の奥からこんなオヤジに観察されていることは決して気持のいいものではなかった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
ところで読者諸君は、ダンネベルグの着衣の右肩に、一個所鉤裂かぎざきがあったのを記憶されるだろうが、それにはまた、容易に解き得ない疑義が潜んでいるのだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)