釣舟つりぶね)” の例文
それでその苫の下すなわち表の間——釣舟つりぶねは多く網舟あみぶねと違って表の間が深いのでありますから、まことに調子がよろしい。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「で、お孃さんは、大方見當がついてゐることと思ふが、菊次郎さんが釣舟つりぶねで庭の池から出るのは、この間の晩に限つたことではなかつた筈だと思ふが——」
大洋の知識の少しずつ拡大してきたのは、今も続いている釣舟つりぶねが主たる機会だったかと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いざ雪ふらば降れ、風ふかば吹け、我が方寸ほうすんの海に波さわぎて、沖の釣舟つりぶねおもひも乱れんか、ぎたる空にかもめなく春日はるひのどかになりなん胸か、桜町が殿の容貌おもかげも今は飽くまで胸にうかべん。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
池には小さい釣舟つりぶねがありましたので、それを漕いで出たやうで、全くあきれ果てたことでございます。