酒盞うくは)” の例文
「王子よ、我の酒盞うくはを爾は受けよ。」と、兵部の宿禰は傍からいって、馬爪ばづで作った酒盞を長羅の方へ差し延べた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
山蟹の卵は爾の腹から我の強き男子おのこを産ますであろう。来たれ。我は爾のごとき美しき女を見たことがない。来たれ。我とともに我のへやへ来りて、酒盞うくはを干せ。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
大夫は妻の髪を掴んで引き伏せようとしたときに、再び新しい一人の足音が、蹌踉よろめきながら三人の方へ馳けて来た。それは酒盞うくはを片手に持った長羅の父の君長であった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)