郷土くに)” の例文
床屋の主人あるじ政治談せいぢばなしの好きな、金が溜つたら郷土くにへ帰つて、県会議員になるのを、唯一の希望に生きてゐる男だ。私は訊いてみた。
臺所では、お米をいでゐる女中が、はやり唄をうたつて夢中だ。湯殿では、ザアザア水音をさせて、箒をつかひながら、これも元氣な聲で、まけずに郷土くにの唄をうたつてゐる。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
もちろん花子にはなにもうちあけず、郷土くにの手みやげにする皮だともうしておきました。
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それもその筈で、印度のやうに何時でも花のある土地では、蜜の臍繰へそくりを拵へておく必要も無かつたのだ。蜜蜂飼養家は大事な蜂を失つた代りに、幾らか賢くなつて郷土くにへ帰つて来た。
この一事は四国出身の人達が、何をおいても忘れてはならない郷土くに自慢の材料で、人間に自慢の種が見つからない場合には、えてきちやのみを自慢の数によみ込んだところで、少しの差支さしつかへもないのだ。