邪念じやねん)” の例文
顏立ちは綺麗な方で、色白で邪念じやねんのない笑ひを一杯にみなぎらせ乍ら、少し傳法な調子でまくし立てるところなどは、腹の底からの結構人でなければなりません。
お峯の訴へる眼付き——邪念じやねんなどは微塵もありさうのない、大きい悲しみと困惑とに惱まされた眼付——を見ると、八五郎もそれを言ひ出す氣にもなりません。
人間が如何にも邪念じやねんがなささうなので、相手になつ居ると、うつかりしたを滑らして了ふのでせう。
お藤はたまり兼ねた樣子で、薄暗い部屋の中へ、邪念じやねんの無い——が、おろ/\した顏を出します。
みなは靜かに顏を擧げました。お濱に似て昔は美しかつたでせう、貧にやつれ果てては居りますが、何の邪念じやねんがあらうとも思はれません。話の筋道も、まことによく通ります。
邪念じやねんとか作爲とかを、何處かへ忘れて來たやうに、いかにも可愛らしい娘です。こんなふくよかな娘は、無抵抗で無防禦で、惡魔のには、最も都合が良いのかも知れません。
愛嬌あいけう者の喜八は、少し卑屈ひくつらしいが、邪念じやねんのない世辭笑ひをして居ります。