邂逅でつくは)” の例文
ツルゲネーフで思ひ出したが、僕は一度猟夫手記れふふしゆきの中にでもありさうな人物に田舎ゐなか邂逅でつくはして、非常に心を動かした事があつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
知らぬ獣に邂逅でつくはした山羊の様な眼をして、女は卓子の彼方むかうに立つた! 然しアノ眼に、俺を厭がる色がちつとも見えなかつた。然うだ、吃驚びつくりしたのだ。唯吃驚したのだ。尤も俺も悪かつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もう一里も前に行つて居るといふ有様、若い者などがよく村の中央まんなか邂逅でつくはして、石などをはふりつけてる事が幾度いくたびもある相だすが、中々一人や二人ではかなはない。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
山人は退屈すると、銭湯に出かけて行つたり、大弓だいきうを引きに出かけて行つたりした。途中などで邂逅でつくはすと、『僕のうちに来たのかえ、これから弓に行くんだ、一緒に行き給へ』
紅葉山人訪問記 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)