遍照へんじょう)” の例文
かすかなる墨痕ぼっこんのうちに、光明の一きょを点じ得て、点じ得たる道火どうかを解脱の方便門よりにないだして暗黒世界を遍照へんじょうせんがためである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
衆生しゅじょう救船ぐせんともなり、人生を遍照へんじょうする月ともならなければならない。飄々ひょうひょうと、雲水にあそび、悠々と春日をたのしむ隠遁僧いんとんそうのような境界きょうがいを自分はのぞんでいるのではなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかし僧正遍照へんじょうは天狗を金網の中へ籠めて焼いて灰にしたというが、我らにはなかなかそのような道力はないから、平生いろいろな天狗におびやかされて弱っている、俳句天狗や歌天狗
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
遍照へんじょうの花のぼうしか花頂山 日能にちのう
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)