逡巡しりご)” の例文
うち出して会おうとするには、すでに胸中見透されている気がして逡巡しりごまれた。ぎかくるは伯母のまにまにである。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さすがに貞之進は逡巡しりごみして引還そうとする時、あなたやと二階裏で高く呼んだ声が、小歌の声のように思われて立留ったが、よしや小歌であった所がよその座敷へ出て居る事
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
蛇は首をもたげて生贄いけにえに進み寄って来るので、汪は眼をとじて、いよいよ一心に念誦ねんじゅしていると、蛇は一丈ほどの前まで進んで来ながら、何物にかさえぎられるように逡巡しりごみした。
内々直したる初心さ小春俊雄は語呂ごろが悪い蜆川しじみがわ御厄介ごやっかいにはならぬことだと同伴つれの男が頓着とんじゃくなく混ぜ返すほどなお逡巡しりごみしたるがたれか知らん異日の治兵衛はこの俊雄今宵こよい色酒いろざけ浸初しみはじ鳳雛麟児ほうすうりんじは母の胎内を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)