這裏このうち)” の例文
さらば此男も、身体こそ無造作に刻まれた肉塊の一断片に過ぎぬが、人生の大殿堂を根柢から揺り動かして響き渡る一撞万声の鯨鐘の声を深く這裏このうちに蔵して居るのかも知れない。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
這裏このうちには惡しきもの住めり。人若しあやまちて此門に入るときは、多くは再びこれを出づることを得ず。その或は又出づるものは、痴なるが如く狂せるが如く、た尋常人間の事を解せずといふ。
或は又、「空腹」の影薄さも這裏このうちに宿つて居るかも知れない。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)