近視眼ちかめ)” の例文
窓に金網が張つてあるのでせう。其網の目をもるあかりで細かい仮名を読んだ。其の所為せゐで、恐ろしい近視眼ちかめ、これは立女形たてをやまの美を傷つけて済みません。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「手前、御存じの少々近視眼ちかめで。それへこう、かすみかかりました工合ぐあいに、薄い綺麗な紙に包んで持っているのを、何か干菓子ででもあろうかと存じました処。」
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、うございます。これ、それではあの近視眼ちかめは……いえ、謂わして下さいよ。他人ひとの金銭に其方そちが関係する権利はあるまい。一体近視眼は其方の何だい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
座敷ではたもとへ忍ばす金縁の度装どもの硝子がらすを光々さした、千鳥と云う、……女学生あがりで稲葉家第一の口上いいが、廂髪ひさしがみ阿古屋あこやと云う覚悟をして度胸を据えて腰を据えて、もう一つ近視眼ちかめを据えて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)