迂濶者うかつもの)” の例文
迂濶者うかつものっ、そんなことを、このただす要があろうか。士道にふた道はない、藩祖以来の城を枕に、死ぬだけのことじゃないか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分の私は卒業する間際まで何をして衣食の道を講じていいか知らなかったほどの迂濶者うかつものでしたが、さていよいよ世間へ出てみると、懐手ふところでをして待っていたって
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「黙れ、迂濶者うかつもの、この阿呆あほう! ……密閉してある檻なんぞ、カラクリじゃ、まやかしよ! そのようなものに何んの何んの、落人おちゅうどなんど隠して置こうか! ……けものの檻に、獣の檻に!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何という迂濶者うかつものだ! せがれの秘密を、未然に、処置してやらないばかりか、伜が、江戸表へ帰って、貴殿の温かい手にかくまわれていることも、貴殿が、そのために、腹を切って、果てたことも、当時は
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんという俺は迂濶者うかつものだ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)