蹲踞うづくま)” の例文
おとなしく真中に蹲踞うづくまつてゐないとすぐひつくり返りはしないかと思はれるやうな舟。そればかりではありません。
一少女 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
と申さるゝ時麹町三丁目瀬戸物屋忠兵衞たゞちに白洲へ呼込よびこみと相成長庵のかたはらに蹲踞うづくまる是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
聞けども聞えず、命の蔭に蹲踞うづくまる一念の戀は、玉の緒ならで斷たん術もなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
紳士の影に潛んで顏も上げず、蹲踞うづくまつて、風呂敷の包物を膝にかかへた儘、胸悸どぎまぎして居るのが不圖目を見張つて、壯侠わかものの顏を偸視る、途端、その亦鋭い視線と出合つて、俯向と急に顏色を變へた。
二十三夜 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
ぶなの根がたに蹲踞うづくまりぬ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一時間近くもその墓石の前に蹲踞うづくまつて袖を顔に当てゝゐたが、雪後の泥濘ぬかるみを拾ひつゝ寺の山門の方へと出て来た時には、あらゆる悲哀が涙となつて解けて流れて行つたやうな気がした。
百合子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)