赤鰯あかいわし)” の例文
「親分、心配するのも無理はねえが、これは筋の悪い金じゃありません。実は親分も知っていなさるあっしの赤鰯あかいわしを、望み手があって売ったんで」
「内藤とは内藤、内藤伊織だ。はっはっは、妻恋坂殿様の御用人、あんまりたちのよくねえ赤鰯あかいわしさ。はっはっはは」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おい、浪人さん——その刀は、どうしたんだ? 赤鰯あかいわしではねえということは、御連中さま、もうよく、お目を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「や、こりゃお岩が死んでおる」刀を見つけて、「こりゃ小平めの赤鰯あかいわしじゃ、そんなら彼奴きゃつが殺したか」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『なんだその眼は。てめえの作る刀の未来も分るぞ、眼からして、もう赤鰯あかいわしだ。——水を浴びて来いっ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また研ぎがよほど乱暴——それは大道の古道具屋で買ったときまったくの赤鰯あかいわしだったので、肉の減るほど研がなければならなかったわけだが——だったとみえ、にえも匂いもみだれも殆んど消滅し
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「親分、心配するのも無理はねえが、これは筋の惡い金ぢやありません。實は親分も知つて居なさるあつしの赤鰯あかいわしを、望み手があつて賣つたんで」
伝来の刀とか、秘蔵の名剣とか、聞えている物ほど、ただ大事がるばかりで、赤鰯あかいわしにしてしまっているのが多いようです。かあいい子を盲愛しすぎて、お馬鹿に育ててしまう親のようなものですな。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いゝ加減にしないか、八。吉三郎の狙つたのは、赤鰯あかいわしぢやなくて牙彫けぼりの根附だつたかも知れないな——兎に角、十兩の金を持つて行つて、脇差と根附けを買ひ戻して來るがいゝ」
うなぎの寢床のやうな長い店には役に立たない物や、片輪な品物ばかりを集め、まことに慘憺たる有樣です、赤鰯あかいわしのやうな脇差や、槍の穗も轉がつて居りますが、血だらけな匕首などは無く