象棋しょうぎ)” の例文
陸は遠州流の活花いけばなをも学んだ。象棋しょうぎをも母五百いおに学んだ。五百の碁は二段であった。五百はかつて薙刀なぎなたをさえ陸に教えたことがある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
或る時象棋しょうぎをさしていて、ふと曲淵まがりふち正左衛門の事を言いだしたが、この人は二百年前にいた人であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これは非常に多数の家屋が倒潰したのだと思った、同時に、これでは東京中が火になるかもしれないと直感された。東照宮前から境内をのぞくと石燈籠は一つ残らず象棋しょうぎ倒しに北の方へ倒れている。
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
書斎の縁側にて象棋しょうぎさしながらの会話。
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
徳三郎という息子が象棋しょうぎをさしに出ていた。夜が更けて帰って、閉出しめだしを食った。近所の娘が一人やはり同じように閉出を食っている。娘は息子に話し掛ける。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
純一は象棋しょうぎも差さずも打たないので、棋を打っている人を見ると、単に時間を打ち殺す人としか思わない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
宇平は折々町の若い者の象棋しょうぎをさしている所などへ往った。最初は敵の手掛りを聞き出そうとして、雑談に耳を傾けていたのだが、後には只何となしにそこで話していたのである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)