タト)” の例文
乳母も、遠くなつた眼をすがめながら、タトへやうのない美しさと、づゝしりとした手あたりを、若い者のやうに楽しんでは、撫でまはして居た。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
白い骨、タトへば白玉の並んだ骨の指、其が何時イツまでも目に残つて居た。帷帳トバリは、元のまゝに垂れて居る。だが、白玉の指ばかりは細々と、其にカラんでゐるやうな気がする。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
南家の姫の美しい膚は、益々マスマス透きとほり、ウルんだ目は、愈々イヨイヨ大きく黒々と見えた。さうして、時々声に出してジユする経のモンが、物のタトへやうもなく、さやかに人の耳に響く。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)