諷語ふうご)” の例文
世間には諷語ふうごと云うがある。諷語は皆表裏ひょうり二面の意義を有している。先生を馬鹿の別号に用い、大将を匹夫ひっぷ渾名あだなに使うのは誰も心得ていよう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「先生は皮肉でいい。ム……だが、皮肉や諷語ふうごは、正直にうけとられると、時に大変なまちがいになるものじゃ。しかしよかろう、由来、先生という名称は、その表より裏で通用するものだ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも一種の諷語ふうごであるからだ。マクベスの門番は山寺のカッポレと全然同格である。マクベスの門番が解けたら寂光院じゃっこういんの美人も解けるはずだ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
裏面から観察するとすれば酔漢の妄語もうごのうちに身の毛もよだつほどの畏懼いくの念はあるはずだ。元来諷語ふうご正語せいごよりも皮肉なるだけ正語よりも深刻で猛烈なものである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)