詠草えいそう)” の例文
義清は、無二の郎従、源五兵衛季正すえまさという者に、歌の詠草えいそうを持たせて、待賢門院たいけんもんいんの女房たちのつぼねへ、使にやっていたのである。
誰にも、手をつけさせなかつた草稿を入れて置く机のわきの藤簍つづらかごを掻廻かきまわしたり、人のところから勝手に詠草えいそうを取り寄せたりして版に彫つた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
……小右京さまとは、いぜんからお親しい仲とみえ、ままここへもお顔を見せますし、小右京さまもお歌の詠草えいそうなど持って、何かとよう行き来しておられまする
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歌の詠草えいそうなどを届けてよこして、評を求めるので、そのつど、歌はみてやるけれど、範綱とは、べつな世界に生きている人間であって、いくら永く知ってはいても
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
粟田口あわたぐちの大僧正のもとへ、添削てんさく詠草えいそうを、持って参ろうと思う。そちも来ぬか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高氏はかねて亡き俊基から死の前夜に「……いつの日か妻に手渡して給われ」と頼まれていた彼が幽居で手写しゅしゃした法華経一部と、和歌の詠草えいそう一帖とを、忘れずに持って西上したのであった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)