旧字:言靈
河内瓢箪山へ辻占問ひに往く人は、堤の下や稲むらの蔭に潜んで、道行く人の言ひ棄てる言草に籠る、百千の言霊を読まうとする。
呪詞を伝承して暗記させてゐる間に、其主君の皇女・皇子たちに呪詞の含むところの言霊が作用して、呪詞の儘の力を持つ人とならしめるものと考へた。
さて、言霊のさきはふと言ふのは、其活動が対象物に向けて、不思議な力を発揮することである。
昔は、言葉によつて、物事が変化する、と言ふ言霊の信仰をもつてゐた。
我が国には古く、言霊の信仰があるが、従来の解釈の様に、断篇的の言葉に言霊が存在する、と見るのは後世的であつて、古くは、言霊を以て、呪詞の中に潜在する精霊である、と解したのである。