解剖室かいぼうしつ)” の例文
一番奥の解剖室かいぼうしつの中で、ガチャリと金属の器具が触れ合う物音がした。ああ、解剖室! それは、あたしの一番苦手にがての部屋であったけれど……。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
馬琴物ばきんものから雪中梅型せっちゅうばいがたのガラクタ小説に耽溺たんできして居た余に、「浮雲うきぐも」は何たる驚駭おどろきであったろう。余ははじめて人間の解剖室かいぼうしつに引ずり込まれたかの如く、メスの様な其筆尖ふでさきが唯恐ろしかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それから、五六日過ぎて矢野は、自分のほうの講義がすんでから、二三の同級生がさそうままに、解剖室かいぼうしつを見に行った。矢野は医学生いがくせいながら解剖かいぼうというものを始めて見るので、なんとなく気味が悪い。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ただ一つ、消し忘れたかのように、また魔物の眼玉のように、黄色い光が窓かられている建物があった。それは法医学教室の解剖室かいぼうしつから洩れてくる光だった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)