装釘そうてい)” の例文
カングリ警部は探偵小説の本の装釘そうていの図案から犯人を推定する達人でしたから、まことにどうも、明治維新以後は、とても真犯人は捕まらない。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
スコットの四十八巻のウェイヴァリ・ノヴルズと同じ様な赤色の装釘そうていで、全二十巻、千部限定版とし、私の頭文字を透かし入りにした特別の用紙を使うのだそうだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
最近に装釘そうていに手をつけたものがあれば、眼にとまらないなんてことは絶対になかったはずです。製本屋から来たばかりの五、六冊の本は、針で念入りに探ってみました
書簡集に用いるお金があったなら、作品集をいよいよ立派に装釘そうていするがいい。発表されると予期しているような、また予期していないような、あやふやな書簡、及び日記。
葉子は江戸ッはだの一色をも好いていたのだったが、芸術と名声に特殊の魅力を感じていた文学少女型の彼女のことなので、到頭出版されることになった処女作の装釘そうていを頼んだのが機縁で
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その本屋から出る本は内容装釘そうてい共に全体としてきちんとした一定の特色が貫いているというのが好ましいことだ。そういう色がすぐさま読者の頭に思い浮ぶことのできるようにして貰いたい。
書物の倫理 (新字新仮名) / 三木清(著)
たくまずして、砂子屋書房主人、山崎剛平氏に、ばとんをお渡ししなければならなくなった。私の本がどれくらい、売れるであろうか。私の本の装釘そうていは、うまく行くであろうか。