血色ちいろ)” の例文
梅はじっと血色ちいろの亡くなった主人の顔を見ていて、主人がひどく困っていると云うことだけはさとったが、何に困っているのか分からない。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
祭の日などには舞台据えらるべき広辻ひろつじあり、貧しき家の児ら血色ちいろなき顔をさらしてたわむれす、懐手ふところでして立てるもあり。ここに来かかりし乞食こじきあり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
緑なす毒の沼池を照す血色ちいろの月。
脚絆きゃはん足袋たびも、紺の色あせ、のみならず血色ちいろなき小指現われぬ。一声いっせい高く竹のるる音して、勢いよく燃え上がりし炎は足を焦がさんとす、されどおきなは足を引かざりき。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)