虚空おおぞら)” の例文
高坂は思わず足踏あしぶみをした、草のしげりがむらむらとゆらいで、花片はなびらがまたもや散り来る——二片三片ふたひらみひら虚空おおぞらから。——
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小夜さよ更けぬ。町てぬ。どことしもなく虚空おおぞらに笛の聞えた時、恩地喜多八はただ一人、湊屋の軒の蔭に、姿あおく、影を濃く立って謡うと、月が棟高くひさしを照らして、かれおもてに、扇のような光を投げた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)