茶番ちゃばん)” の例文
同時に、おどろきと怒りを通りこした一種のおかしみが、頭から与吉の半纒をかぶった栄三郎の胸にまるで自分が茶番ちゃばんでもしているようにこみ上げてきた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
如何どうだ、このざまを勝田君に書いてもらったら、一寸ちょっと茶番ちゃばんの道行が出来ようじゃないか」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そんなことは戦争には避けられぬ茶番ちゃばんのようなものだ、と小太郎は口ではいっていたが、心の底では、いつどこで仕返しをされるかわからぬという不安にたえず脅かされているふうで
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「いや、地獄の一丁目までいってきたよ。は、は、は、とんだお茶番ちゃばんさ」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
茶番ちゃばんを一々本気にしてやがる)並んで歩く高城の顔を盗み見ながら、宇治は一瞬鋭い憎悪が彼に湧いて来るのを感じていた。しかし天につばするようにそれは厭な感じを伴って彼の心に戻った。……
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
……ああ、もうたくさん! そんな茶番ちゃばんはあたしの性に合わないの。……あたしは、あす、快遊船ヨットを降りて、淫売婦いんばいふにでもなっちまう。そのほうが、結局、人間らしい生活というもんだわ
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すべては茶番ちゃばんに過ぎないではないか。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)