若御料わかごりょう)” の例文
足利若御料わかごりょう(千寿王)の宿所には、近くの八正寺ヶ谷の別当屋敷をあてていた。——義貞の家臣は駈けて、まもなく、千寿王をこれへ迎えてきた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……このような小むずかしい談合、若御料わかごりょう(千寿王)にはご退屈らしいの。細川どの。あとは後日としよう」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ならば、すぐ行け。さきに参った吉良、細川は、若御料わかごりょうやら親王をお連れ出し申すだけでも手いっぱいだし、たれでもよいと安心できるような秘命でもない」
鎌倉から救出して連れていた成良しげなが親王・みだい所の登子・またとくに若御料わかごりょう(尊氏の一子・千寿王)らの足弱をおいて——そうした短気はおこしえないところであった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利若御料わかごりょう礼讃らいさんはまア笑止しょうしながら聞き捨ててもおこうが、鎌倉入りの大合戦は、ひとえに、若御料(千寿王)の参陣があったからこそ勝ったのだとかした雑言ぞうごんだけはききずてならん。
相互がこのせまい土地にひしめき合うていては紛糾沙汰ふんきゅうざたを増すばかりゆえ、義貞は上洛いたす……と。そしてあとは若御料わかごりょうがよしなにここをおさめ給えと、恩にきせて、申し告げてやったわけだ
「そうだ。さっそく、若御料わかごりょうをこれへ呼んでしんぜよう。……そのあいだ、まず一こんまいるがよい。これは鶴ヶ岡の神酒みき、きのう、全軍の将士へ勝ち祝いとしてけたものよ。まず一杯ひとつまいれ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)