芝居気しばいぎ)” の例文
私たちも一寸ちょっと芝居気しばいぎを出して、パナマや雀頭巾すずめずきんを振る。童話の中の小さな王子のお蔭で、ほがらかに朗らかに私たちも帽子が振れるというものだ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
人間はいくら窮した場合でも、時々は芝居気しばいぎを出す。自分がアテシコをしりに敷いて、深い坑のなかで、カンテラをひっさげたまま、休んだ時の考えは、全く芝居じみていた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
未完成の草稿そうこうを焼き捨てるとか、湖中へ沈めるとかいう考えも浮ばないではなかったが、それほど華やかな芝居気しばいぎさえなくなっていて、ただ反古ほごより、多少惜しいぐらいの気持ちで
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
探偵家というものが、何故そんな風に思わせぶりなものであるか、幼稚なお芝居気しばいぎに富んでいるものであるかということを、今に至っても、私は時々考える。そして、腹立たしくなるのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そう云うときまってるかい」と主人は相変らず芝居気しばいぎのない事を云う。迷亭君はぬからぬ顔で
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)