自負心じふしん)” の例文
それから又夏目先生の話に子規しきは先生の俳句や漢詩にいつも批評を加へたさうです。先生は勿論もちろん子規の自負心じふしんを多少業腹ごふはらに思つたのでせう。
正岡子規 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ある問題について討議とうぎしても同じことである。おれはも少しよくできるはずだがという観念は付き物のように万事について起こる。自負心じふしんであろうかと思うけれども自負心とは違う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あの方は自負心じふしんの強い方で——ロチスター家の人達は皆さうでしたが——少くともあの方のお父さまはお金がお好きでした。あの方も矢張りいつでも用心深い方だと云はれてをりました。
かの子 一面からえば非常にものわかりのいい新鮮らしい女性が多い様に見えるけれど、それは近代の女性に許されている可成かなりの自由と、女性そのものの普遍化された新味から来る自負心じふしんとであって
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
續けさまにロチスター氏の胸かられ、傷もつけず彼の足下に落ちてしまふ矢が、もしもつと確かな手に射られたならば、彼の自負心じふしんの強い心を鋭く突きさし——彼のきつい眼に愛をび出し