自家いえ)” の例文
酒宴の席を取り持つのは洞院左膳と鳰鳥におどりとで執事の筆頭甚五衛門は、あの夜以来ご勘気をこうむって自家いえこもっているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
素姓すじょうのたしかでない浪人なぞと往来していることが知れたら、自家いえの者が何を言い出すかも解らないと考えたばかりではなく、なにかしら一つの秘密を保っていたいと言ったような
その後私はどうしたかというに、孫文先生の旗下を離れ一旦自家いえへ立ち帰って妹や婆やと邂逅した。それから再び家を出て世界の旅へ上ったのである。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人眼が怖いか裏口から、横町へ抜ける細道伝いに娘お糸が今しも自家いえを出るところ、町家にしては伊達者めいた艶姿、さすが小町の名を取っただけ、容色いろかたち着付の好み、遠眼ながら水際立って見えた。
自家いえと云っても同族の土屋右衛門の邸であったが、そこへ帰って来た庄三郎は、人達から驚異の眼で見られた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
早瀬が自家いえをさまよい出たのは、数年前のことであり、愛する良人の頼春が、多治見ノ四郎二郎国長の館を、六波羅勢と一緒に攻め、その戦場から行方不明になったと
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これが彼女が自家いえを出て、流浪の身となった原因であった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)