老婦としより)” の例文
四時ごろに、老婦としよりは娘の意気なくしなどを挿し込んで、箪笥にきちんと錠をおろして、また病院の方へ出かけて行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
林の隠居は、こんな事をしたことの無い、温柔おとなしい老婦としよりで、多勢の前へ出ると最早下を向いて了った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ええ、おのれはひとをこのがけから突落す気だな。この老婦としより騙討だましうちに為るのだな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
時とすると子息むすこ夫婦に対する、病的な嫉妬から起るこの老婦としよりの兇暴な挙動ふるまいをもなだめてやらなければならなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
染めずにいるお倉の髪は最早老婦としよりのように白い。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
暑い病室へ入って行くと、患者の呻吟声うめきごえがまた耳についた。お庄は老婦としよりに替って、患者の傍の椅子に腰かけた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
老婦としよりは傍からもどかしがって、看護婦に尋ねてみたが、看護婦やお庄は笑っていて取り合わなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)