羽交締はがいじ)” の例文
飛びかかって行った方の、つまり偽総監が、余りの事に手出しも出来ぬ本物の総監を、うしろに廻って、羽交締はがいじめにしてしまった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すると大蔵は、いきなり城太郎の手を引き寄せて、ぎゅっと、羽交締はがいじめに抱き込みながら、彼の耳へ、くちをつけて、小声にいった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飛退くと甚三郎の手には、キラリとのみひらめきましたが、早くも飛付いた八五郎、後ろから、鑿を持つ手ごと、一流の剛力で羽交締はがいじめにしてしまいました。
お燗番の卯八は後ろから、その身体を羽交締はがいじめにしました。こでで船底の栓などを抜かれたら、船の中の九人は、ひとたまりもなく溺れ死ぬことでしょう。
後ろから羽交締はがいじめに抱き止める者、腕を捻じとる者、足を持つ者、さながらに刃傷にんじょうでもあるような喧噪けんそうを起して、ドドドッと後ろの方へ一、二間も退き戻した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は文代を羽交締はがいじめにして、肩越しに彼女の顔を覗きこみながら、熱い息でいった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お駒は振りもぎって逃げようとしましたが、平次は後ろから羽交締はがいじめにして、離そうともしません。
「助けて下さい——召使が突き落された! あれ! 流れて行きます。誰か来て——ッ」必死に人を呼ぶその口へ、何者か、大きなふたしてしまった。そして羽交締はがいじめに強く抱きすくめた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのみ合いは長くはありませんでした。曲者にどんな術があったものか、羽交締はがいじめにした八五郎の腕をスルリと抜けると、巨大な鳥のように、サッと物蔭に消え込みます。
と八五郎が羽交締はがいじめに喰い止めたのです。