「名なんかドウでも好い、なくても好い、猫に名なんか付けるのは人間の繁文縟礼はんぶんじょくれいで、猫は名を呼ばれたって決して喜ばない、」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
いわゆる慶応の改革がそれで、二百年間の繁文縟礼はんぶんじょくれいが非常な勢いで廃止され、上下共に競って西洋簡易のふうに移ったのも皆その結果であった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
学生には相も変らず八股文はっこぶんなど所謂いわゆる繁文縟礼はんぶんじょくれいの学問を奨励して、列国には沐猴而冠もっこうにしてかんす滑稽こっけいなる自尊の国とひそかに冷笑される状態に到らしめた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ちょうど今時はやりの繁文縟礼はんぶんじょくれいであったのだ、そこへ早雲が来て、この繁文縟礼の弊風を一掃してしまい、また苛税を免じて民力の休養をはかった、つまりこれで、うまく治めたのだ。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二……袁紹は繁文縟礼はんぶんじょくれい、事大主義で儀礼ばかり尊ぶ。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
繁文縟礼はんぶんじょくれいを省こう、その費用をもっと有益な事にてよう、なるべく人民の負担をも軽くしよう——それがこの改革の御趣意じゃありませんかね。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
多くの繁文縟礼はんぶんじょくれいが改められた時、幕府が大改革の眼目として惜しげもなく投げ出したのも参覲交代のふるい慣例だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たといその制度の復活が幕府の頽勢たいせい挽回ばんかいする上からも、またこの深刻な不景気から江戸を救う上からも幕府の急務と考えられて来たにもせよ、繁文縟礼はんぶんじょくれいが旧のままであったら
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二百年間の繁文縟礼はんぶんじょくれいが驚くべき勢いで廃止され、上下共に競って西洋簡易のふうに移り、重い役人でも単騎独歩で苦しくないとされるようになったのは、皆この慶喜の時代に始まる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)