紅提灯べにぢょうちん)” の例文
旧字:紅提燈
が、こうした事に、ものれない、学芸部の了簡りょうけんでは、会場にさし向う、すぐ目前、紅提灯べにぢょうちんに景気幕か、時節がら、藤、つつじ。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外はもう年暮としぐれの景色であった。赤い旗や紅提灯べにぢょうちんに景気をつけはじめた忙しい町のなかを、お島は込合う電車に乗って、伯母の近所の質屋の方へと心がかれた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
切通しの森をいて、紅提灯べにぢょうちんや虫売りの灯が、夜空の星と争って、風のふくたび、そよぎ立って見える。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治五年初めて横浜と新橋との間に汽車が開通した時、それを祝って新橋停車場の前には沢山の紅提灯べにぢょうちんが吊るされましたが、その時その提灯には皆舶来蝋燭はくらいろうそくを使用して灯をつけたものです。
銀座は昔からハイカラな所 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)