粟立あはだ)” の例文
二重ふたへ玻璃ガラス窻を緊しく鎖して、大いなる陶炉に火を焚きたる「ホテル」の食堂を出でしなれば、薄き外套を透る午後四時の寒さは殊さらに堪へ難く、はだへ粟立あはだつと共に
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ゆき子は褞袍をぬいで、粟立あはだつやうな寒さの中に、手荒く硝子戸を開けて、湯殿へ降りて行つた。ひのきの浴槽に、満々と赤い湯が溢れてゐる。もうもうとして湯気が、狭い湯殿にこもつてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)