筆跡)” の例文
「兄さん、この字は、筆の軸の端に糸をつけ、高い所から吊るして書いたものだよ。そうすると、どんな人でもちがった筆跡になる」
紅色ダイヤ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「隱しちやいけない、お蝶を脅かした手紙は、亂暴な字ではあつたが、間違ひもなく女の筆跡だ、調べて見さへすれば、すぐわかることで」
この密告書はアイツの筆跡に相違ないよ。ここに来て吾輩の窮状を見ると間もなく書上げて、識合しりあいの船頭に頼んで、呼子よぶこから投函さしたものに違いないんだ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「へエ、折々手紙は參ります。たしかに伜の筆跡で——檀那だんな寺の和尚樣にも褒められましたが、伜は字もよく書きます、此處へ一本持つて參りましたが——」
「堅い字でした。今時あんな字を書く者は滅多にありません。女子供やお店者たなもの筆跡じゃございません」
「堅い字でした。今時あんな事を書く者は滅多にありません。女子供やお店者たなもの筆跡ぢや御座いません」
「大變な匂ひがするよ。それに、半紙に書いた遺書の下手な字と、この雁皮がんぴのうまい字とは大變な違ひだ。此方は確かに女の筆跡だ。お久良が心覺えに書いたものだらう」
「心細いな、親分。あの若黨友吉の行李かうりの中から、お玉のかんざし半襟はんえりが出て來ましたよ。それから、あの下手つくそな手紙は、友吉の筆跡に違ひないこともわかつたんだが——」
搜して居る筈だ。女の物——お玉の形見が一つや二つはあるだらうし、あのお玉の殺された時、八五郎の家へ投り込んだ手紙と同じ筆跡で書いたものも、必ず見付かるに違ひない
「でも、ちよいと良い筆跡ぢやありませんか、こいつは何んとか流と言ふんだつてね」
『第廿七吉、禄を望んで重山なるべし、花紅なり喜悦の顔、か。——病人は本服すべし、待人来るべし——』そんな事はどうでもいいとして、見事な筆跡で書き入れがしてあるよ。
『第廿七吉、祿を望んで重山なるべし、花紅なり喜悦の顏、か。——病人は本服すべし、待人來るべし——』そんな事はどうでも宜いとして、見事な筆跡で書き入れがしてあるよ。
「いや、手を変えて書いたから変な肩上がりになったんだ。矢張り女の筆跡だよ」
う書いてあるのでした。相當に書ける筆跡を隱して荒々しく書いたもので
「よし/\、だん/\目鼻がつくやうだ。ところで、この字は誰の筆跡だえ」
「なるほど、——ところで、この包の上に書いた字は、主人の筆跡かい」
「この字は誰の筆跡なんだ。かなかつたのか——お前のことだから」
「成程、——ところで、この包の上に書いた字は、主人の筆跡かい」
「お糸さんさ、あの人は寅藏がひいきだし、筆跡も良いから」
「これも亡くなつた主人重三郎の筆跡に間違ひあるまいな」
「こいつは、この男の筆跡に違ひないだらうな、番頭さん」
「こいつは、この男の筆跡に違いないだろうな、番頭さん」
「お前は豊年坊主の筆跡を知つてゐるのか」
「何んだ、いつもの女の筆跡だよ」
「こいつはお前男の筆跡だぜ」