立慶河岸りっけいがし)” の例文
あれからも二度三度、立慶河岸りっけいがしのお茶屋に上がって、一節切ひとよぎりぬしを待つ夜もあったが、とうとうそれきりその尺八たけもその影すらも見かけない……。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう、いわずもがなのことだが、この痩形やせがたの美人こそ、去年の秋まで、大阪の立慶河岸りっけいがしにいた川長かわちょうの娘およねであった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「殊にあなたの宗長流を立慶河岸りっけいがしで初めて聞いた晩から、もう妙に心をひきずられて……あれから後も、どんなに音色をおしたい申していたかしれませぬ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが——あまりよく似た音色ねいろでもあった。立慶河岸りっけいがしを流していたのを、川長の二階で聞いたあの音色。ほんとにソックリな節廻ふしまわし、曲もたしかに宗長流の山千禽やまちどり
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、後ろ姿を並べ、向う側へ斜めに歩いて行ったかと思うと、また足を止めて、立慶河岸りっけいがし埋立辺うめたてへんにたたずみ、まだほかの連れでも待っているようなふうであった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お十夜はというと、立慶河岸りっけいがしからお吉をつけてみようと言いだしたのは彼自身なのに、ここへ来ると、横着に腕ぐみをしたまま、二人の狼藉ろうぜきへ、むしろ冷蔑れいべつな目をくれている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ハイ、立慶河岸りっけいがしのお宅へも道頓堀の芝居へも、大津の叔父さん——なんていったっけ、そうそう、大津絵師おおつえし半斎はんさいか、あそこへ行くとおっしゃっても、宅助やっぱりお供しなけりゃなりませんぜ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)