空恐そらおそろ)” の例文
せめてもの慰藉なぐさめにしようと試みるのであったが、しかし何となくその身の行末空恐そらおそろしく、ああ人間もこうなってはもうおしまいだ。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お沢 今さら、申上げますも、空恐そらおそろしうございます、空恐しう存じあげます。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分が夫の白井と隣同士であつた事が、現在藤田さんの場合と全く同じであることを思ふと、嫉妬の念よりも、まづ先に怪しい因縁とでもいふやうな空恐そらおそろしい気がして来る。
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
角張った父の顔が、時としては恐しい松のこぶよりもなお空恐そらおそろしく思われた事があった。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)