祁寒きかん)” の例文
(正月二日祁寒きかん、硯に生冰こほりをしやうず。そののち尋常。花朝前くわてうぜん一夕雷雨めづらしく、二月廿三日小地震、三月八日亦小地震。其外なにごともなし。)
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かほばせめでたく膚かちいろなる裸裎らていの一童子の、傍に立ちてこれを看るさま、アモオルの神童に彷彿はうふつたり。人の説くを聞くに、このさかひさむさを知らず、數年前祁寒きかんと稱せられしとき、塞暑針は猶八度を指したりといふ。
「今年は十一月迄は暖に候処、小寒入より祁寒きかん、雪もなくて只々さむく候。御地いかが。皆様御あたりも無之候哉。尊内、令郎様方、おさよどのへも宜奉願上候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
五百の晩年の生活は日々にちにち印刷したように同じであった。祁寒きかんの時を除く外は、朝五時に起きて掃除をし、手水ちょうずを使い、仏壇を拝し、六時に朝食をする。次で新聞を読み、暫く読書する。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)