碁笥ごけ)” の例文
私は大抵一局で碁笥ごけをとじる。数かずの局を続けることにより古人の名局が凡手の脳裡に錯綜して風趣をそこなうことのないように。
独り碁 (新字新仮名) / 中勘助(著)
黙ったまま碁笥ごけをとった泰軒は、やにわにそれを荒々しく振り立てた。無数の石の触れ合う音が騒然と部屋に流れる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
庄吉は二目まで打込まれてゐたことを忘れず黒石を二つ並べたが、太平はしばらくその石を見つめてゐたのち、とりあげて庄吉の碁笥ごけの中へ投げ入れた。
外套と青空 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
客もその後を受けて石をおろしたが、その指さきは慄えていた。彼はその時二十六歳であった。そのうちに碁が終ってしまった。彼は客と石の吟味をした後に、じぶんの石を碁笥ごけに入れて盤の上に置いた。
八人みさきの話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
やむを得ず、碁笥ごけの蓋を取りました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僧は主翁の出した碁笥ごけに手をやった。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)