砧青磁きぬたせいじ)” の例文
とこを見れば、東山ひがしやま名物でもありそうな名幅めいふくがかかっていた。花器を見れば、砧青磁きぬたせいじとおぼしき耳附みみつきびんに、ってけたばかりのような牡丹ぼたんのつぼみが笑みを割りかけている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
砧青磁きぬたせいじ香爐かうろ聖茶碗ひじりちやわんなどと共に差出し、御調べ濟の上、元の御手箱に返したのが、二た月ほど前、鍵は私の兄、側用人桑原伊織が預かりますが、何かの都合で殿へ差上げた時、ほんの半日だけ
ふと彼がそこを開けると、まだあかりの来ていない広やかな壁と畳の寒々とした中に、寂然じゃくねんと独り——たとえば、一箇の砧青磁きぬたせいじの香炉がそこに在るかの如く——澄んだおもてをしてひたと坐っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外に馬遠ばえんの軸物、砧青磁きぬたせいじの香炉、聖茶碗ひじりぢゃわんなどと共に差出し、御調べ済みの上、元の御手箱に返したのが、二た月ほど前、鍵は私の兄、側用人桑原伊織が預りますが、何かの都合で殿へ差上げた時